おわりに

 卒業論文を書くにあたって、僕はずっとテーマを考えていた。そして、ある日自分の身近なものを、ということであるテーマを掲げたわけだが、「おもしろくない」と、岡本先生に一瞬で一蹴された。そして、「そんなに居眠りしてるんだから居眠りをテーマに」という冗談交じりの言葉をかけられたのだ。僕も冗談として受け取っていたのだが…。そうしてこの論文は始まった。
 僕にとってあまりに身近すぎる「居眠り」について、深く考えたことがなかった。あくまで自分だけの問題と思っていた。それを公の問題だと自分に言い聞かせるのに随分と時間がかかった。しかし、何度か居眠りに関しての文章を書いているうちに、だんだんと問題点が浮かび上がってきた。
 しかし、まだ不安は大きかった。僕一人が問題視しているだけで、他の人は何も思っていないのではないかと。そして、その問題を公のものとするにはどうしたらよいか途方にくれていた。そして、アンケートを取ることを先生に提案され、それによってなんとなくではあるが、不安は少しづつ無くなっていった。
 それから、アンケートを取っているうちに、論文の難しさを実感するようになっていった。何を論じたいのか。何を論の中心に据えるのか。そういったことがまったく見えなくなっていった。道が見えなくなってしまったそのとき、自分で論文を諦めようとしていた。誰にも助けを求めることができない、孤独なものであると自分で判断していた。
 そのとき、岡本先生にひどく怒られた。他人に怒られたのは一体何年ぶりだろうか。さらには、卒業論文においては親である、とまで言われた。僕はいままで、いろんな先生に出会ってきた。とてもいい先生だ、と尊敬する先生は数人いるが、どの先生も親であるとは思ったことがない。岡本先生もそうだ。しかし、先生は親である、と言った。僕にとって、それは衝撃的であった。そしてそれが、論文を再びはじめるきっかけとなり、このように論文が形になった。岡本先生に怒られたことは、一生忘れないだろう。
 卒業論文は一人で書くものではなかった。本当に論文を書き始めたのは遅かったけれど、それからはたくさんの情報をたくさんの人から頂き、とても感謝している。忙しい中、時間をとってくださり、論文の方向付けについて相談にのっていただいた東村先生。附属幼稚園でのアンケートや観察を許可していただき、ビデオや新聞記事などの資料まで頂き、卒業論文の完成へエールをくださった附属幼稚園の比留間副園長先生、そして片山先生。ネット上で見知らぬ学生に対して、意見を述べてくれた全国の養護教諭の先生方。さらに、アンケートに快く応じてくれた中学生、学生、先生方に心からお礼を言いたい。
 最後に、僕の指導教官である岡本先生。数多くのヒントを頂いた。卒業論文だけでなく、生き方としてのヒントも頂いた。とても心配してくれた。とても迷惑をかけた。多くを与えていただいた。研究室選びから問題アリだった僕を、最後まで本当に親のように面倒を見てくれた。僕ができるのはこの論文を完成させることぐらいだったろうか。感謝しても、しつくせないほどである。言えるのはひとこと、「本当にどうもありがとうございました。」

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