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第3節 学生の居眠り
 次に、学生においても、居眠りに対するの意識と、居眠りの実態を調査するために、無記名で記述アンケートを行なった。(資料3

◆ アンケート概要
実施時期:1999年12月
対象:大学生・大学院生 計75名
実施方法:
@アンケートを直接手渡し、回答後に回収
AE-mailでアンケートを送信、回答を返信してもらった

◆ 集計結果
 番号は、アンケート(資料3)の質問番号と同じである。番号のあとの《 》に質問項目をそのまま載せてある。

1. 《平日の起床時刻と就寝時刻を教えてください。(複数ある方は、そのうち最も多いものを記入してください)》

 平日の平均睡眠時間は6時間44分、平均就寝時刻は1時7分、平均起床時刻は7時52分となっている。表4は、中学生との比較である。
 中学生と比較して、平均就寝時刻は約1時間遅くなり、24時を過ぎて日付が変わっている。しかし、平均起床時刻は30分遅くなっているだけであることから、平均睡眠時間は約30分減少している。
  就寝時刻に関して、アルバイトなどの関係からか、生活が夜型になりつつある傾向がみられる。起床時刻に関しては、中学生は義務教育であり、登校時間が一定しているのに対し、学生は自由であるから大幅に起床時刻が遅くなっているのではないか、という予測に反し、中学生との差はそれほどみられなかった。学生の通学時間を考慮に入れ、起床時刻が早まることを考えたとしても意外であった。
 また、中学生と学生を個人の起床時刻の差でみてみると、中学生の場合はもっとも早く起きるのが6時、もっとも遅くて8時と差は2時間であるのに対し、学生はもっとも早くて4時、もっとも遅くて15時とじつに11時間の差がある。同じように就寝時刻についてみると、中学生は21時から3時で差は6時間、大学生は22時から6時の8時間と、起床時刻、就寝時刻ともに大学生のほうにばらつきがみられる。
 このことから、中学生の生活は規則正しく、大学生の生活はたいへん乱れているように見える。しかし、視点を変えれば、中学生の生活リズムは学校に合わせたものであるのに対し、学生の生活リズムは人間として自然な、人それぞれ固有のリズムで生活しているとみることもできる。
表4
平均就寝時刻 平均起床時刻 平均睡眠時間
中学生 23時51分 7時13分 7時間22分
学生 1時7分 7時52分 6時間44分
1時間16分 39分 38分

2. 《家で充分な睡眠をとれていますか。(充分とれている ・ まあまあとれている ・ ふつう ・ あまりとれていない ・ ほとんどとれていない)》 

 家庭での睡眠の満足度を聞いた(グラフ6)。
 56%の学生が「充分とれている」「まあまあとれている」と答えた。厚生省が1996年に行なった保健福祉動向調査6では、平均睡眠時間6時間〜7時間未満が37%ともっとも多く、15歳から29歳までの男女71%が、睡眠による休養がとれていると答えている。
 中学生の「充分とれている」「まあまあとれている」の値は合わせて30%であるから、中学生と比べて平均睡眠時間約30分が減少しているにもかかわらず、学生の睡眠の満足度は高い。つまり睡眠は長さではなくその質が問題とされ、自分のリズムで生活を送っている学生は短くとも質の高い睡眠をとれているということがうかがえる。

 睡眠時間別の睡眠における満足度(表5)はどうであろう。総数でもっとも割合の高い睡眠時間7時間〜8時間未満の行(水色)において、いちばん高い値を示しているのは「まあまあとれている」(14.7%)である。中学生の場合(表3)では、総数で最も高い割合の睡眠時間8時間〜9時間未満の行で、最高値は「ふつう」であり、ここからも学生は中学生に比べて睡眠時間が少ないながらも質の高い睡眠をしていることがわかる。

表5 (単位:%)

睡眠時間 総数 充分とれている まあまあとれている ふつう あまりとれていない ほとんどとれていない
5時間未満 5.3% - 1.3% - 2.7% 1.3%
5時間〜6時間未満 18.7% - - 5.3% 9.3% 4.0%
6時間〜7時間未満 21.3% - 12.0% 6.7% 2.7% -
7時間〜8時間未満 29.3% 6.7% 14.7% 4.0% 4.0% -
8時間〜9時間未満 17.3% 5.3% 9.3% 2.7% - -
9時間以上 8.0% 2.7% 4.0% - 1.3% -

 さらに、表3と表5を比較してみる(図8)。表3の中で、数値の高いセルの集まりを大きく青いだ円で囲ってみる。さらに、表5においても同じように赤いだ円で囲う。表は上にいくほど睡眠時間は短くなり、左にいくほど睡眠の満足度は高くなる、つまり左上にいくほど睡眠の質は高まるということである。表3の青いだ円を表5のほうに点線で表示して比較すると、赤いだ円のほうが左上に位置し、学生の睡眠のほうに質の高さがうかがえる。

図8

3. 《「居眠り」とは、どういう状態だと思いますか。思い当たるものをすべて選んでください。(座りながら眠る・うとうとする・思わず眠ってしまう・うそ寝をする・公共の場所で眠る・その他)》

 居眠りはどういった状態のことであると思うかを問い、「その他」では選択肢にないものを書いてもらった(グラフ7)。
 結果は、「うとうとする」「思わず眠ってしまう」の値が34%、33%と、中学生(24%、44%)に比べて10%ほどの違いが出た以外はほとんど変化はない。「うとうとする」「思わず眠ってしまう」が合わせて67%、また、「その他」の回答において、「寝たらダメな時に寝てしまう」「しなければならない事があるのに、どうしても眠くなってしまったり、気づくと眠っている状態」という意見があり、ますます居眠りが意識とは別のところで起こるものであるという考えを深めるものである。
 「その他」にはまた、「気分がよく、リラックスしている状態」というものもあり、居眠りの心地よさがわかる。

4. 《授業中、居眠りをしたことがありますか。(ある・ない)》

 授業中の居眠りの経験があるかどうかを二択で聞いた(グラフ8)。
 96%の学生が「ある」と答えた。
 睡眠がとれていないと答えた学生は24%であったにもかかわらず、居眠りの経験が多いという理由として、ひとつめに、この質問は現在までの経験を問うものであったので、過去に居眠りを経験していたのかもしれない。もうひとつは、睡眠と居眠りは別のものであり、充分な睡眠をとっていても居眠りは起こるのではないかということである。

5. 《(4.で「ある」と答えた方にのみお聞きします)居眠りをしたときの教師の対応はどのようなものでしたか。当てはまるものをすべて選んでください。(起こされた・立たされた・顔を洗うよう言われた・放っておかれた・寝かしておいてくれた・理由を聞かれた・あとで注意された・教師は気づいていなかった・その他)》

 質問4で、居眠りをしたことがある、と答えた学生に、居眠りをしていたとき教師はどのような態度をとったかを聞いた(グラフ9)。
 中学生のアンケートの「無視」を、「放っておかれた」と「寝かしておいてくれた」に分けてある。「その他」には、選択肢にない意見を書いてもらっている。
 「無視」の割合が53%と、中学生(42%)より多い。「無視」の内訳(グラフ10)は、教師の好意または配慮で「寝かしておいてくれた」という割合が34%であるが、「放っておかれた」という意見が66%を占めていた。つまりそのとき、その学生は集団から除外されていたと感じたのである。
 これは授業を受ける側が感じた意見であるから、そのときの教師がほんとうに寝かしておいたのか放っておいたのかはわからないが、学生たちにそう受け止められているこということは、そういった行動をとったのと同じになるのではないだろうか。
 「教師は気づいていなかった」の項目は、大学などで教室が広くなっていくにつれて増加すると思われたが、16%(中学生24%)と減少した。「起こされた」「立たされた」「顔を洗うよう言われた」「理由を聞かれた」「あとで注意された」の合計は29%と中学生の33%を下回り、教師が居眠りについて積極的に関わったケースは減少している。学生は中学生よりも多くの教師に出会っていることからくる結果であろうか。

6. 《授業中の居眠りに大きく影響するのは何だと思いますか。思い当たるものをすべて選んでください。(睡眠時間・本人のやる気・授業内容・教師の姿勢・教室の環境・他人の居眠り・その他)》

 授業中の居眠りに影響するものについて、中学生のアンケート項目に「他人の居眠り」を追加した(グラフ11)。その他には、選択肢以外に思い当たるものを書いてもらった。
 「授業内容」「教師の姿勢」「教室の環境」という学校・教師側の責を問うものが52%、半数を超えた形になった。その中でも「教師の姿勢」については中学生(3%)に比べて11%と大幅に増加しており、それは緊張感のない授業、一方的な授業とでもいえるのであろうか。
 中学生に比べ「本人のやる気」が31%から22%に減少し、「教師の姿勢」が増加していることから、学生のやる気よりも学生が教師に「やる気」を求めているのかもしれない。教育を受ける側として、受け身の姿勢になるよりも、教育をする側にもっと多くのことを要求していくことも必要になってくるのであろう。

7. 《授業中の居眠りは許されるものであると思いますか。その理由もお願いします。(許される・許されない・どちらでもない)》

 授業中の居眠りの善悪を問えば、世間のイメージからほとんどの学生が「悪いことである」と答えるであろう。ここでは視点を変えて、授業中の居眠りは許されるものであるかどうかを聞き(グラフ12)、それぞれの意見を集めてみた。以下に、各選択肢と、その理由の要点をまとめ、分析してある。

◆ 許される(26%)
・ 責任を負うのは本人
・ 授業のあり方(教師)にも問題がある
・ 寝るつもりではない(生理現象である)
 どの意見も、責を自分にあて、自己の責任のもとに居眠りするのであるから、誰にもとがめられはしない、だから許される、という主張が多かった。

◆ 許されない(23%)
・ 授業は起きて聞くことが基本である
・ 他人への影響
・ 授業料を払ってもらっている
・ 教師に対して失礼である
ここでは、自分自身よりも、周囲のことを気にする意見が多い。世間のモラルであるとか、たてまえといった感じも捨てきれない。ただ、「許されない」と答えた学生の8割は、質問4で、居眠りをしたことが「ある」と答えており、「許されないという気持ちがあってもつい眠ってしまう」という記述が多かったのが印象的である。

◆ どちらでもない(51%)
・ 許される場合とそうでないときがある
・ 私語に比べて他人に迷惑をかけないという意味で「必要悪」である
 この項目の意見は、見事というほど「許される」と「許されない」の理由を組み合わせたものがほとんどであった。つまり、自分のことを考える場合は許してほしいと思い、教師など周囲を考えた場合には許されないと感じるということである。「どちらでもない」の本質は「許してほしい」にあるようにも感じた。

8. 《自分の居眠りに対して、教師にどのような対応、配慮をしてほしいと思いますか。》

 この質問では、質問5を踏まえ、それではどういった対応を希望しているのかを自由記述の形式で聞いた。代表的な意見をグラフ13にまとめ、その各項目においておもな意見を挙げ分析した。

◆「放っておいてほしい」(41%)
・ 本人の問題であるから
・ 見て見ぬふりをしてほしい
・ 気づかないふりをしてほしい
・ そっとしておいてほしい
 質問5の「寝かしておいてくれた」に相当する、教師は気づいていても見逃してほしいという願いのこもった意見が大半を占めた。

◆ 「授業内容」(30%)
・ わかりやすく聞きたくなるような授業
・ 眠くなる暇がないほど面白い、集中させてくれる授業
・ 眠気もぶっ飛ぶぐらい面白い授業
・ 講義中心から生徒参加型の授業へ
・ 眠ってしまったことを後悔させるような授業
・ 寝るすきを与えないような中身の濃い授業
 これらに共通するのは、緊張感を保ち、生徒にとって魅力のある授業をしてほしい、ということであろう。生徒が面白い、と思える授業とはいったいどのようなものなのであろう。また、これらの条件を満たした授業を展開する教師は、存在するのであろうか。

◆ 起こしてほしい(18%)
・ 軽く注意してほしい
・ 生徒が聞いていようがいまいが、勝手に進められるのは本来の授業の姿ではない
・ そっと起こしてほしい
 居眠りが、意図せず起こってしまったのであるから、居眠りをしたことを気づかせてほしいといった願いがみえる。そして、軽く、そっと、さりげなくという表現があり、恥ずかしいから目立たぬように気づかせてほしいという思いをくみ取ることができるであろう。

◆ 環境改善(5%)
・ ふっと一息ついたり、体を伸ばしたり、頭や気持ちを切り替える間があればいい。
・ 教室の空気を入れ替え、窓を開け放つ
 居眠りをなくすために緊張感が必要であるとはいえ、あまりに緊張が長く続くと、疲れてくるものである。その点を改善してほしいというねがいがみえる。教室は、非常に密閉された空間で、息苦しいと思うことがよくある。高校まで、冬は特にストーブがあったため、教室がほぼ酸欠状態になっていたのをよく覚えている。気分はその環境によって大きく左右されるものであるから、まず学習できる環境を整え、気分を新たに授業に挑むことが大切であると思う。

◆その他
・ なぜ居眠りをしてしまったかを考えてほしい
・ 理由をたずねてほしい
・ 怒らないでほしい
「なぜ居眠りをしてしまったか」というのは、教師側の原因なのか、生徒側の原因なのかはわからないが、どちらにしろ教師が考える立場にある。「理由をたずねてほしい」「怒らないでほしい」という意見は、おそらく教師からの働きかけに対する不満から出てきたのではないだろうか。

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