
第2章 教育を受ける側の居眠り
第1節 幼児の居眠り
幼児の睡眠時間を調べるため、保護者を対象に無記名でアンケートを行った。(資料1)
◆ アンケート概要
実施時期:2000年1月
対象:奈良教育大学附属幼稚園の黄2組(5歳児)の保護者32名
実施方法:アンケート用紙を配布、家庭で記入してもらい、後日回収した。
◆ 集計結果
平均就寝時刻は9時19分、平均起床時刻は7時13分、平均睡眠時間は9時間53分であった。また、昼寝を加味した平均睡眠時間は9時間59分であるが、昼寝をしている幼児はほとんどおらず、その原因として保育時間の影響が挙げられる。附属幼稚園の場合、保育を終えて帰宅すると、理想とされる1時頃から2時頃までの昼寝の時間
は過ぎてしまっている場合が多いのである。保育所の場合では、その時間帯に昼寝の時間をとっているところが多いのではないだろうか。
表1は起床・就寝時刻・昼寝を含む睡眠時間別の割合である。
表1
| 就寝時刻 |
|
| 7時頃 |
5% |
| 8時頃 |
19% |
| 9時頃 |
33% |
| 10時頃 |
23% |
| 11時頃 |
0% |
| それより遅い |
0% |
|
| 起床時刻 |
|
| 6時頃まで |
0% |
| 6時30分頃 |
10% |
| 7時頃 |
48% |
| 7時30分頃 |
33% |
| 8時頃 |
10% |
| それ以降 |
0% |
|
| 睡眠時間(昼寝を含む) |
| 8時間まで |
0% |
| 8時間ぐらい |
5% |
| 9時間ぐらい |
24% |
| 10時間ぐらい |
57% |
| 11時間以上 |
14% |
|
1995年の熊本県学校保健会の「「児童生徒の心と体の健康づくり」に関する調査結果」
では表2のようになっている。
表2(数値はおよそ)
| 就寝時刻 |
|
| 7時頃 |
0% |
| 8時頃 |
7% |
| 9時頃 |
57% |
| 10時頃 |
32% |
| 11時頃 |
3% |
| それより遅い |
1% |
|
| 起床時刻 |
|
| 6時頃まで |
2% |
| 6時30分頃 |
8% |
| 7時頃 |
30% |
| 7時30分頃 |
35% |
| 8時頃 |
23% |
| それ以降 |
2% |
|
| 睡眠時間(昼寝を含む) |
| 8時間まで |
1% |
| 8時間ぐらい |
3% |
| 9時間ぐらい |
26% |
| 10時間ぐらい |
57% |
| 11時間以上 |
13% |
|
表1、表2を比較すると、就寝時刻の最も高い値は表1、表2ともに9時頃(33%、57%)で、表1のほうが少し早寝の傾向がみられる。起床時刻は、7時30分頃までに起きる子どもが表1では91%、表2で75%と、附属幼稚園の長い通学時間のためか、表1にはやや早起きの傾向がみられる。しかし、睡眠時間をみれば大差はなく、幼児は平均して10時間ほどの睡眠をとっていることがわかる。先ほど求めた平均睡眠時間が9時間59分であるから、この調査は特別に偏ったものではない、といえる。また、寝る前にしていた行動と睡眠時間との関係については特に顕著な傾向はみられなかった。
僕は、1999年9月から、教育実習として附属幼稚園に1か月通い、園児たちを見てきた。また、今回新たに「居眠り」を意識して観察をさせてもらったが、幼児において居眠りという現象は見られなかった。これは、理想とされる9〜10時間と充分な睡眠時間がとれているから、という理由だけではなく、睡眠の質も確保されているからに違いない。また、さらにもう一つ大きな要因があると考える。
観察をしていて気づいたこととして、写真1,2にもあるように、子どもたちは先生をじっと見つめている。僕が観察にくることは子どもたちには知らされておらず、つまり知らない人が自分たちの教室に入ってきて、カメラを構えている。にもかかわらず、子どもたちは先生のほうに注目しているのである。先生の目は絶えず子どもたち全体を見渡し、子どもたちは先生の動きやことばのひとつひとつに興味を持ち、反応する。保育室には緊張感あふれる、それでいて何かやさしい雰囲気がただよい、子どもたちと先生の一体感のようなものが肌に伝わってくるようであった。 |
写真1
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写真2
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| 写真3からは、子どもたちの積極的な活動の様子がうかがえる。このときは絵画制作の時間であり、保育室から広い遊戯室へ移動したのであるが、ほとんどの子どもがわれさきに、と走って行き、早々と絵を描き始めたのである。絵が描ければ先生に見てもらいに行き、1枚目が描き終われば2枚目へ、絵を描くのに飽きた子どもたちは、何か他の遊びがないかと動き回っていたのである。おそらく、子どもたち全員がそのときに絵が描きたくて仕方なかったのではなく、先生が子どもたちに働きかけることによって、子どもたちの心を動かしたのであろう。 |
写真3
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僕も実習で何度か保育を担当したが、子どもたちがそのときに何を求めているかということを把握するのがとても大変であった。そのためにはもちろん子どもたち一人ひとりをよく知っておく必要があるし、その場の状況によっても微妙に変化していくものである。先生は子どもを第一に考え、うまく保育の流れを構成していかなければならない。それがうまくいったときにこそ、独特の雰囲気が生まれ、子どもたちの心を動かす材料となるのではないだろうか。
これは、幼児だけに通用する理屈なのであろうか。もちろん、幼稚園はこどもの生理的欲求に沿った保育が設定されているということもあり、居眠りは決して起こらない、ありえない状態ともいってよいであろう。反対に、小学校以降の教育では、時間割があらかじめ設定され、それに合わせた生活を強いられることになる。ここに個人の生活リズムとのずれが生まれ、居眠りが発生する状態が多くなる。しかし、教育のシステムや教える内容は違っていても、教師として子どもを第一に考えることや、よりよい雰囲気づくりをすることなどは、教育現場の姿としては、共通する点であると思う。
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